今日の村岡先生

◆2024年4月22日

お花は大きさに関わらずそれぞれ色々なランクがあります。この写真の桜は最高級のものです。絹の種類が違ったり、コテの当て方が違ったり、蕾や中開きの花の造り方も違います。そして花の軸の途中に小さな葉っぱが付いています。最高級の花は小さくても存在感があります。

◆2024年4月2日

村岡先生が造られた桜の花を奥様が花瓶仕様に組まれました。雲上流らしく右側に枝が伸びています。花瓶用や瓶子用など様々な仕様の花を季節に応じて組まれます。

小さな一輪挿しに雲上流の造花が入れてあるだけで華やかな雰囲気になります。

◆2024年3月12日

今日は久しぶりに水引の結び方を教えていただきました。熨斗と同様に水引も様々な結び方があります。本数も7本だったり、8本だったりします。

水引の先のちりを造るのに数をすると、指に穴が開いたとおっしゃていましたが、慣れないと数回でも指が痛くなります。

◆2024年2月27日

この桜の花は村岡先生が取材を受けた時にコテあてを実演された時のものです。次々に手際良くコテをあてて、あっという間に箱いっぱいになりました。

その時の桜を使って今回、上巳の熨斗飾りを奥様がお造りになられました。先生のお仕事の様子が思い出されます。

◆2024年2月13日

雲上流の桜橘はサイズも色々ありますが、桜は造り方も様々です。コテの当て方もそれぞれ違います。しかしどのお花も丁寧に造られており、小さいサイズだからと言って花の数を少なくすることはありません。

◆2024年1月29日

上巳の熨斗飾りを造るために奥様が橘の葉と実をお造りになっておられました。雲上流のコテ当てがしっかりと受け継がれています。村岡先生が橘の葉のコテが当てられるようになったら一人前とおっしゃっていました。

私は桜の中開きを久しぶりに造らせていただきました。そして熨斗の準備も進めました。

◆2024年1月15日

今日は村岡登志一先生のお誕生日です。本来なら95歳のお誕生日。昨年は奥様と3人でケーキを食べてお祝いをしました。今年は先生のお写真を前に2人でケーキを食べました。今も村岡先生の声が聞こえてくるように思います。

奥様は桜の小巻きを造っていらっしゃいました。私は久しぶりに桜の葉を造らせていただきました。桜の葉は女性の仕事でした。

◆2023年5月29日

ゴールデンウィークを挟んで久しぶりに先生にお会いしました。

古い有職造花を雲上流の花かどうか確認をお願いする時があります。雲上流の花は一目見てお分かりになります。場所に合わせて、用途に合わせて様々なお飾りをお造りになりますが、花の造り方は同じです。花びら1枚にもコテの力強さがありアートフラワーとは全く別のものです。できあがった花を見ただけでは真似ができない技です。

 

◆2023年4月10日

今日は桃の花を造らせていただきました。上巳の節句といえば桜橘ですが、濃いピンク色の桃の花の造花を雛飾りの横に置くだけでも華やいだ雰囲気になります。2023年の旧暦の桃の節句は4月22日らしいです。4月3日に片付けられる方も多いようです。

桃の花は薬玉の下りや口花にも使われますが、桃だけで生花のように花瓶に入れて先生のお宅のお玄関に飾られていました。それを拝見し、桃のお花を造りたくなりました。

◆2023年3月27日

お香の世界でも造花を使います。香飾りとして使われる花挿し袋には小さな四季の花が刺してあります。その他に競馬香は香道の盤物組香の一つで聞き香を争うゲームですが、桜と紅葉を使います。それぞれとても小さなお花ですが一つ一つ丁寧にコテが当てられています。先生も何度かお香屋さんの注文を受けてお花を造られてきました。

◆2023年3月13日

雲上流では大きくは2種類の松があります。老松と若松です。特に若松は代々の当主しか使えない大きな器具を使って特殊な技で造られます。よく先生が若松の造り方を見たら雲上流かどうかが分かるとおっしゃっていました。

この2種類の他にガリ松と呼ばれる捻りながら造る松もあります。

◆2023年3月5日

先生のお宅のお玄関には上巳のお飾りや御殿花と一緒に可愛い雛人形が並んでいます。そして桃の有職造花も飾られていました。ちょうど実物大くらいのお花でしょうか、実際の桃のように花や蕾、葉っぱが付いていました。お人形さんのサイズに合わせることが多いので実物大のお花は珍しいですが、そのような注文も時々あったそうです。桃の花があると雛飾りも一層華やかになります。

◆2023年2月17日

4寸ほどの小さな輪が3っつ、これで7寸の草の薬玉(球体)ができます。先にお花を造られますが、この輪に花を取り付けるのは一気にされます。気分が乗っている時は穴開けのミスもなく3時間ほどで組み上げることができるそうです。でも気乗りのしない時や急いでいて心に余裕がない時は穴の位置を間違い、花を何度も触り傷んでくるので、そんな時は作業をストップして違う仕事をするそうです。何度造っても完成した時はホッとするとおっしゃっていたので、よほど神経を使う作業なのだとわかります。奥様が「どんなサイズでもはじめに造る花の数を間違わない」と感心されていました。私もすごい数のお花をお造りになって、きっと余るだろうと思っていても、全て使われたのを何度も目にしています。極意を尋ねたら「勘で分かる」とニコニコされました。

◆2023年2月13日

村岡先生は人形組合に20年ほど所属しておられました。その匠の会では毎年文化博物館で展覧会があり、それに向けて新作をお造りになっておられました。展覧会が終わったらすぐに次のアイディアをお考えになったそうです。五節句のお飾りはもちろん立派な枝垂れさくらや紅葉の立木をお造りになられたこともあります。期間中、デモストレーションで実演をされたこともあるそうですが、何をされたか尋ねたところ、橘の葉のコテ当てをしたとのことです。橘の葉のコテ当ては雲上流でこれができたら一人前と言われるほど難しいコテ当てです。

◆2023年1月28日

雲上流を継がれた村岡先生以外にも有職造花を造られていた方はご兄弟やご親戚にいらっしゃいました。それぞれの役割が決まっていたそうで、村岡先生が最上のランクのお花を造られ、並の御殿花を先生の弟さんが担当されていたそうです。他にも並の松竹梅を担当されていたご親戚もいらっしゃったそうですが、雲上流代々受け継がれてきた宮中の造花を造ることができたのは村岡先生だけです。

◆2023年1月15日

今日は村岡先生の94歳のお誕生日です。一緒にケーキを食べてささやかなお祝いをしました。

お元気にお過ごしくださることを心より願っております。これからも色々なお話を聞かせていただきたいです。お正月にひ孫さんたちご家族がお集まりになられて賑やかだったと楽しそうに話してくださいました。

◆2022年12月12日

以前、人形組合でワークショップをされたことがあるそうです。皆さん、持ち回りでされたようです。雲上流造花では島台と羽子板をされたそうです。木(ボク)組みなど下準備をして皆さんに楽しんでいただいたとのことでした。私もSNSで時々見かけます。村岡先生の作品のような違うような…と思ったことがありましたが、ワークショップと聞いて納得がいきました。

先生もお人形さんを造られたことがあるそうです。楽しい交流会でもあり、お勉強会ですね。

◆2022年12月5日

毎年、ちょうど今頃は家蔵総出で蓬莱飾りをお造りになられていました。人形屋さんが人日のお飾りの蓬莱の飾りをお歳暮としてお配りになっていた時期があったそうです。ヒカゲノカズラを家の中に広げて捌くのは手も荒れて大変だったと奥様と一緒に懐かしそうに話されていました。

蓬莱飾りは「五種」(松竹梅プラス橘と福寿草)と少し小ぶりの「梅じるし」と呼ばれる松竹梅だけが付いたものがあります。

特別注文で座布団ほどの大きな蓬莱飾りもお造りになったことがあるそうです。熨斗を折るのもひと苦労されたそうです。

◆2022年11月28日

雲上流造花には古くから伝わるコテがたくさんあります。何代にも渡って受け継がれているのですね。大東亜戦争中(先生は第二次世界大戦のことをこのようにおっしゃいます)金属は没収されましたが、仕事で使うものは免れたそうです。と言っても戦時中の4年間は仕事にならなかったとのことです。先生の2〜3年上の学生さんは徴兵されたそうで、日本でも戦争は他人事ではない話で心が痛みます。

村岡先生は道具部門として人形組合に所属されていましたが、人形組合は大東亜戦争前からあったそうで古くからある組合なのですね。

◆2022年11月19日

雲上流の初代からの家系図があります。普通の家庭では何代も前に遡るのは難しいことと思いますが、宮中に出入りされていたからでしょうかきっちりと残っています。

蛤御門の変までは御所の官舎に住んでいらっしゃいました。

村岡先生もそうですが今でも御所の周りには有職関係の職人さんが多く住んでいらっしゃいます。その職人さんもかなり減ったとのことで寂しいです。

◆2022年11月5日

今日は雲上流に代々伝わるものを拝見しました。雲上流の歴史について書かれているものや古い絵などです。そしてその中には糸引きの和紙もありました。明治以前は裏打ちした絹ではなく糸を貼り合わせたものを使っていました。糸引きは絹の布よりはるかに光沢があります。糸を貼るのはかなり難しいテクニックが必要です。コテを当てるのにも方向があり、花を一つ造るのも大変だったと思います。

◆2022年10月15日

有職雲上流造花の箱書きは先生が一枚ずつ筆で書かれています。最近は紙箱ですが以前は木の箱も多く、墨が滲まないように工夫されていたようです。石に彫った印を押す際も失敗ができなかったので数が多かった時は大変だったと思います。

写真は重陽の熨斗飾りですが重陽の茱萸袋は本来黄色と白の菊だけでした。長寿のお祝いという意味もあり華やかに赤を加えてお造りになっています。

◆2022年10月2日

先生のお祖父様以前は糸引きで花を造られていました。糸引きとは和紙の上に糸が並べて貼ってあるものです。布と違って光沢がありとても美しいのですが、糸を貼るのもコテを当てるのも大変です。真の薬玉はもちろんのこと御殿花の桜や重陽の茱萸袋の菊も糸引きで造られていたのを実際に私も拝見したことがあります。あの頃は果てしない時間をかけてお花を造ってたと先生がおっしゃってました。その糸を貼る工程も雲上流に伝わる技です。先生のお父様の頃は需要が高まり、布へと変わっていきました。

◆2022年9月13日

今日は先生のお父様の話を伺いました。7寸の草の久寿玉(球体のくす玉)を得意とされ、多くのくす玉をお造りになったそうです。お父様のくす玉はやや下がぽってりした形になっているのが特徴だそうです。因みに村岡先生は美しいまん丸のくす玉をお造りになられます。

仕上がりサイズが1寸違うだけでも7割増の花の数になります。

◆2022年9月6日

今日は菊を久しぶりに制作しました。コテをあてる時も糸を巻く時も私の手元が見えないところに座っていらっしゃる村岡先生が「ぎゅっと力を入れて!」「キュッと締めて!」と絶妙なタイミングでアドバイスをくださいます。見えてなくても音でわかるのでしょうか?

花を見て茎はもう少し太くするようにおっしゃり、先生の頭の中には完成の姿が見えていらっしゃるのだと思います。葉を付けて仕上げた花を先生に見ていただくと、優しい手つきで花びらや葉を触られ、見る見る花に豊かな表情が浮かび上がります。造花であるのに生き生きとしてくるのは長年花と向き合っていらっしゃるからこそできることではないでしょうか。

◆2022年7月18日

今日は古いアルバムを見せてくださいました。先生のお父様が造られた作品の写真です。

ほとんどの写真には昭和5年と手書きで書かれていました。ちょうど先生がお生まれになる1年前です。先生のお父様はまだ20代でしょうか、資料として残すために写真館で撮影されたのだと思います。写真は白黒ですが、どれも大きな作品ばかりでその当時の贅沢で鮮やかな様子が想像できます。

◆2022年7月4日

京都では祇園祭が始まりました。今年は3年ぶりに巡行が実施され、とても楽しみです。

村岡先生も祇園祭の仕事をされています。鶏鉾のお稚児さんの頭に被られるお飾りの花を金色でお造りになられました。なかなか大変な作業だったと当時を振り返っておられました。

村岡先生作ではないのですが、芦刈山の芦も雲上流造花で造られたこともあったそうです。

ちょっと有職造花の話から逸れますが、毎年村岡家は占出山の粽を買いに行かれます。「どうしてですか?」とお尋ねしたところ「釣りが好きなので、鮎釣りの山だから」と即答されました。奥様は「安産の神様でもあるからでは?」とおっしゃっていましたが…釣りの話になると熱心に語られるのを思い出しました。

◆2022年6月20日

真・行・草の薬玉の草は球体ですが一番人気があったようです。先生がまだ幼かった頃、お父様が上巳の節句用の桜橘を造るまでに、草のくす玉を造りためて100個近く棚に並べてあったこともあるそうです。このくす玉は一つずつの販売ですが、中には対で飾るために二個買われる方も多かったようです。7寸の大きなサイズが良く出たとのことで、組む前の四季のお花が部屋いっぱいに並んでいるところを想像すると今でもワクワクします。サイズが1寸違うだけでもお花の量はかなり変わってきます。

◆2022年6月6日

ススキと桔梗の組み合わせをしていたら「3寸なら3寸と丈を合わせて巻かんとあかん」と離れて座っておられた村岡先生の声が聞こえてきました。村岡先生は常に尺定規を手に持ってお花を組んでいかれます。お花は手造りですので一点一点違うのですが、完成した作品のサイズはどれも同じです。ギリギリの箱にきっちりお花が収まるのでいつも感心しています。職人さんの技がこういうところにも出ているのですね。

お花の向きやボリューム感もいつも注意されます。巻き直しも度々あります。妥協という言葉は職人さんには通じないのだと思います。

◆2022年5月23日

今日は出陣飾りのお話をしてくださいました。端午の節句の兜の前飾りとして今までに注文で何度かお造りになったそうです。ちまき、柏餅以外に若松の飾りが付いた鏡餅や土器には5種類の食べもの、米、勝栗、塩、昆布、スルメを盛ります。

◆2022年5月7日

桔梗の花の造り方を教えていただきました。大きな桔梗は糸を巻いた5本の雌しべが付いて手間がかかります。人形の下草に使うような桔梗は小さいですが、丁寧に5枚の花びらにコテが当たっています。先生のお父様がお造りになられた小さな桔梗を手に色々教えてくださいました。

今も紫色が鮮やかで、当時良い染料を使ったのだとおっしゃっていました。

そして桔梗を造るなら梨木神社の近くの廬山寺に桔梗が咲くので見に行くようにと言われました。村岡先生は必ず生のお花を見てお造りになられます。葉の付き方も注意するようにとよく言われます。

◆2022年4月25日

今日は色々なコテを見せていただきました。

桔梗の花のコテは初めて見る変わった形をしていました。一本の筋を入れるコテでも細い線、太い線、深い線などそれぞれに使うコテが違います。

桔梗の花は一本の線を入れながら花びらに丸みを出すコテです。非常に当てにくく、2度押しはできないので1回で美しく当てるのは難しいとおっしゃっていました。

コテそれぞれに力の入れ方なども違うので、全てのコテを使いこなすのは大変なことです。

◆2022年4月18日

桜や梅など、枝の花は小さな単位で造って段々大きくまとめていきます。蕾の位置や枝の出方、花の向きなど細かく確かめながらお造りになります。2、3個のパーツをまとめる際もちょっとした位置で立体的になったり格好が良くなったり、常に村岡先生の頭の中には枝や花の様子がリアルに描かれているようです。

◆2022年4月5日

以前にも書きましたが、雲上流の造花にはランクを表現する言葉があります。翁が1級、鶴は2級、亀は並です。それぞれ大、中、小の大きさがあります。厳密にはもっと細かくサイズが違います。素材は同じですが花の造り方などが違います。雛人形の全盛期は寝る時間もなく造ったと懐かしそうにお話ししてくださいました。

◆2022年3月29日

今日は珍しい老松を見せていただきました。通常絹を使いますが、本麻の糸で造られた松です。

以前はこの松がよく使われていたそうです。かなり硬いので潰れにくく、本麻を好む方もいらっしゃたようです。造り方も全く違います。麻糸を針金で巻き込んで巻いていき、短くカットしたものをさらに丸みを出すために切り揃えます。かなり前のものですが色も美しく残っています。

一つの大きさが結構大きいので、かなり大きな島台になったのではないでしょうか?古くて大きな島台ではこの本麻の松が使われていたと思います。いつの日かこの島台を見たいものです。

 

◆2022年3月15日

3月のこの季節はあちこちで雲上流造花を見かけます。村岡先生は雲上流造花の伝統を守りながらも現代の住まい事情に合わせて色々なお飾りの形を提案されてきました。

形を見てあの頃に造ったものだと覚えていらっしゃいます。

桜と橘のお飾りだけでも御殿花、掛け飾り、薬玉など何十種類もあります。御殿花は木(ボク)を扱うこともあって男仕事だったようです。

◆2022年3月1日

村岡先生は1月にお誕生日を迎えて93歳になられました。

今朝の京都新聞に雲上流造花についての記事が掲載されていました。京都市上京区の国登録有形文化財の商家住宅「仁風庵」のひな祭り会に雲上流の有職造花が展示されるそうです。

お雛様の季節はあちこちで雲上流の造花を見ることができます。

京都のものは腕が違うと嬉しそうにお話をしてくださいました。

◆2022年1月9日

村岡先生のお宅のお玄関には人日の掛け蓬莱と羽子板が飾ってありました。

お正月用の羽子板飾りをお造りになっているのを今まで何度も見たことがあります。

組む木(ぼく)が違うので同じ形のものは一つもありません。使う木は違ってもその先に付く松の葉や梅の花を想像して木の配置を決め、サイズは同じように仕上がります。これぞ職人の技です。

 

 

◆2012年12月20日

梅の花は雛人形の嶋台に使われる1センチほどの小さなサイズもあります。コテは同じように1枚ずつ力を込めて当てますので返ってやりにくく火傷をする恐れもあります。花びらの真ん中には雌しべ、雄しべの匂いをつけますが、それも梅の花びらのサイズに合わせて大きさが違います。匂いは時代によって紙、木、糸、動物の毛など様々な素材が使われてきました。

◆2021年12月6日

今日は梅のコテ当てを教えていただきました。

梅の花びらは一枚ずつコテを当てます。花びらの5枚と真ん中にかなり力を込めて当てます。上半身の体重を乗せるような感じです。

以前、大きな梅の立ち木をお造りになられたことがあります。その時はコテ当てにより手が痛くなって大変だったそうです。

梅はお正月、嶋台、羽子板、結納の花などには必ず付くおめでたい花です。

 

 

◆2021年11月29日

雲上流の松は若松と老松の2種類があり、全く造り方が違います。先日は人日の蓬莱熨斗飾りの用に若松を造られました。若松は雲上流に代々伝わる秘伝の造り方があります。若松を見れば雲上流の造花かどうかがわかると言われています。

今日は老松の方の葉の整え方を教えていただきました。老松は島台や檜扇の袙(あこめ)飾り、羽子板など松竹梅の松として使われています。

 

 

◆2021年11月14日

人日の蓬莱熨斗飾りをお造りになられていました。こちらは現在の住宅事情なども考慮して従来の蓬莱飾りよりコンパクトにアレンジされています。

雲上流の技を生かしながら常に新しいデザインにも取り組まれています。

 

 

◆2021年11月8日

紅葉の季節ですが、先生のお家の中にも可愛らしいモミジが紅葉していました。

この小さなサイズのモミジはとても良くできた型で抜かれています。

先代が注文されたようです。まだこれより小さな型もあり、それは香道具用に使われます。

手で一枚一枚、赤や黄色、橙、緑を染めて、本当の紅葉のようがな色づきです。

小さな葉っぱには何本も葉脈のコテが丁寧に当てられています。

 

◆2021年10月11日

人日のお飾り「蓬莱」の準備をされていました。

五節句の中でも「蓬莱飾り」は一番手間がかかります。若松と紅白の梅と笹は年の初めにふさわしいおめでたいお飾りです。熨斗も赤の縁取りがあり華やかです。

 

今日も雲上流の造花についてたくさんお話を伺いました。村岡先生は雲上流の伝統の花の造り方を守りつつ現代の住まいに合うようにアレンジされ、先生オリジナルのお飾りも多くあります

雲上流は13世続いていますがその時代に合わせて形を変えて来たので現在も残っているのかもしれません。大切なことは一つ一つの花に命が吹き込まれていることだと思います。

◆2021年10月4日

10年前の10月4日に村岡先生のお宅に初めて伺いました。緊急事態宣言でお休みをしていたのですが、久しぶりに伺った日が偶然にも同じ日付けで嬉しく思いました。

初めて伺った日のことは今でも良く覚えています。小さな作業机を挟んで先生と奥様が向かい合わせで座っておられ、黙々とお花を造っていらっしゃいました。私は橘の葉の軸付けを教えていただいたのですが一枚一枚丁寧な作業で驚きました。手を動かすのが大好きな私にとっては心地良いひと時で、それからは先生のお宅に伺うのが楽しみになりあっという間の10年です。

今日は雲上流について色々なお話を聞かせていただきました。先生のお父様がお造りになった小さな菖蒲兜も拝見しました。

◆2021年8月18日

お盆も過ぎて、雲上流では珍しい秋のお花の桔梗の造り方を教えてくださいました。

三〜四分(1cm前後)の小さいサイズはお人形さんのお庭の下草や香道具用に造られていて、約一寸(3cm前後)のものは季節の花飾りとして造られていました。

今日は4種類の桔梗を拝見しましたが全て違うサイズでした。型抜きではなく手切りならではできることです。雌しべ、雄しべや蕾も細かい作業が施されて驚きました。「職人は材料をケチったり手間を惜しんだらあかん」と常々おしゃってますが、お花を見る度にその言葉を思い出します。

◆2021年8月3日

今日は重陽の熨斗飾りに使う、ぐみの葉用の絹の裏打ちをしました。ぐみの葉の緑は茶系を混ぜて少し落ち着いた色にします。緑色のバリエーションは一番多いのではないでしょうか?濃い緑、明るい緑…基本の緑に色んな色を加えて調合します。

昔はランクによって緑の色が違ったこともあるそうです。橘の良いものは第1級と言って、深くて渋い色を使ったそうです。

ただ緑の色は変色しやすく、陽に当たらなくても暑さなどで色がボケてくることがあり、昔の緑色が残っているのは珍しいと思います。

◆2021年7月17日

今日は和紙の裏打ちをしました。私も何度かお手伝いをさせていただきましたが、糊の硬さや刷毛の動かし方などは頭ではなく体で覚えるものだとつくづく思います。村岡先生がされると素早く均等に糊が付きます。

以前は新聞紙を広げたよりも大きい和紙を何十枚も裏打ちされていました。裏打ちの和紙も使う花や葉っぱによって厚さが違い、薄いものほど絹に乗せるのが難しく2人がかりで持ち上げます。

絹も先に染めておくものや形に裁ってから色をつけるものがありその段取りも頭の中に全て入っておられます。

◆2021年5月3日

先日のご注文の端午の節句の口花、粽、柏餅が完成しました。先生と同い年の方がお生まれになった時の兜をひ孫さんが受け継がれることになり前飾りを新調されました。90年以上前の兜はとても立派なものだそうです。大事にされてきた節句飾りが次の世代に受け継がれることはとても大切なことだと思います。

さて粽の飾り方ですが三宝に乗せ、葉先先を右向きに置くのですが、先生は魔除けの意味もあり尖った先を外に向けて魔物を寄せ付けないようにという意味かなと思っていますとおっしゃってました。それも理に適っているように思います。

◆2021年4月26日

今日は端午の口花、粽、柏餅をお造りになられていました。

笹の葉は裏打ちした絹を貼り合わせます。中にへぎを入れることもあります。

絹も繻子を使うので分厚く、コテを当てるのも力が要ります。

先生がコテを当てた葉を奥様が粽用の木に巻きつけて5色の糸で巻いていかれます。

そして今度は先生がその粽を組んでいかれます。分業で手際よく仕上がっていきます。

◆2021年4月19日

雲上流では色々な種類のお飾りがあります。またそれぞれに大きさ違いやランク違いがあり、サイズはもちろん作り方も違います。今日は端午の節句の矢飾りの話になり大小それぞれの寸法をさらりとおっしゃり驚きました。かなりの数の種類があるにも関わらず、そしてたまにしかお造りにならないものの寸法も覚えていらっしゃるのです。

矢飾りといえば細くて長い檜の丸棒を使うのですが、なんと木工の職人さんによって1本1本手で削られた棒だそうです。その棒に糸をかけていくのは村岡先生の仕事ですが熟練の技が必要です。

写真は重陽のお飾りの乱菊です。もちろん花びらのサイズもさらりとおっしゃいます。

◆2021年4月5日

紅葉は黄色ベースに赤や緑を足して葉をお造りになられます。お花ではないですがとても色鮮やかで華やかです。

雲上流のお花はどこから見ても良い形になっていますので、思いの外たくさんのパーツが必要です。こんなにたくさん!と思ってもほとんど使い切って余ることはありません。いつも適当とおっしゃられるのですが長年の勘があたり計算されたかのように各パーツを揃えていかれます。

 

◆2021年3月30日

前回に引き続き、小さな菖蒲の花をお造りになられていました。前回は花びらについて書きましたが、今日は葉っぱについてお話ししてくださいました。

菖蒲に限らずですが、花に対して葉は思いのほか沢山の必要だと常々おっしゃっています。

仮に100本の菖蒲の花を造る場合は500枚の葉を用意します。1本1本筋コテを当て、刀のようにシャープに刃先を切り落とします。葉が付くと一気に華やかになります。

◆2021年3月22日

上巳の飾りの季節が終わり、端午や七夕のお飾りをお造りになられます。

小さな菖蒲の花をたくさんお造りになっていました。菖蒲の花は14枚のパーツから一つの花ができます。コテは20回以上あてます。大きくても小さくても同じ工程です。小さければコテをあてるのが難しいくらいです。そしてこの一輪の花に蕾や葉を付けて絹糸で巻いていきます。

一つ一つ手でパーツを裁っていかれるので大きさは一分違いでもできるのが雲上流のお花です。

◆2021年3月8日

今日はコテあてについて教えていただきました。先生がコテをあてておられるといとも簡単そうに見えるのですが、コテの芯をあてるのはなかなか難しく、その場でうまくいったように見えても数日経てばつけたはずのコテ跡が戻ってしまいます。形に沿ってどんなにコテを動かしても常に芯を捉えてないといけないのです。「手先だけではあかん!コテに体の力を乗せるように」と言われます。脇を締めて体重を乗せるように動かすのです。例えば難しいと言われている橘の葉のコテは私なら1枚ずつでもかなりの力を要するのに、先生は数枚重ねてコテをあてられます。それが力任せではなくスムーズに動いているように見えるのです。夜通し橘の葉のコテあてをされていたこともしばしば。腱鞘炎になることもなく今までいらっしゃったのは余計なところに力が入らず、コテと手が一体化していたからでしょうか。

◆2021年3月1日

今日は先生のお父さまの貴重な作品の写真を拝見しました。昭和3年は先生がまだお生まれになっておられませんね。当時は写真屋さんがお家にこられて撮影したそうです。

七夕扇やセキレイ台など珍しい作品もありました。箱庭用の小さなお花は先生が子供の頃にお手伝いをされたそうです。箱庭と言ってもお人形さんが何体も置ける1間(1.8メートル)ほどある大きなものです。当時はそんな注文も結構あったそうです。昨年拝見した奈良の依水園の「曲水の宴」もその一つですね。

◆2021年2月16日

1月に92歳になられた村岡先生は65年に渡って、造花師のお仕事をされています。

有職造花「雲上流」村岡松華堂に代々伝わる薬玉の絵をご覧になりながらいろいろな話を聞かせてくださいました。子供の頃から植物の成長、蕾から枯れていく様までをよく観察したそうです。そのことは造花を造るにあたって大いに役立たれたことと思います。葉脈のコテ当てや枝の出方、花のつき方など造花でありながら不自然なところがあっていけません。例えば桜の花を余分に造るのは、木を組んだ後にその枝ぶりによっては思っている以上に花が必要になるからです。横から、後ろから見ても雲上流のお花は美しいのです。

御所の周りには様々な有職に携わる職人さんが350人ほどいらしたそうです。先生はそのような環境の中、職人の道を歩んでこられたのですね。

 

◆2020年12月21日

今日は先生が本格的に雲上流を継がれる決心をされた頃のお話を伺いました。

先生のお父様は見て仕事を覚えるようにおっしゃったそうです。当時は御殿花の桜橘を納品するのに2日に1度は夜通しの作業が続いたほど忙しく、先生が包丁で葉を刻み、お父様がコテを当てる作業が2〜3年続いたそうです。10月でもコテを焼くための火鉢が熱く、ステテコ1枚で作業されたとか。コテが当てられるようになったら一人前です。

きちっと当たったコテは何十年たっても美しい形のままです。

◆2020年12月7日

今日は御殿花の桜をお造りになられていました。

小ぶりのお花ですがその分花の数も沢山必要になります。

雲上流の花は四方正面に造られているので横から見ても後ろから見ても美しい姿です。お花をぎゅうぎゅうに詰めてもダメで空間を見せないといけないそうです。いつも四方からチェックをされ、小さな枝でも切り落として整えていかれます。

◆2020年11月21日

御所の清涼殿東庭には河竹(漢竹)と呉竹の2種類の竹が植えられています。その竹のご注文があり

2種類の竹をお造りになられました。色や葉の付き方が違います。笹の葉の幅も違うと言われています。

御所の周囲には有職の職人さんが沢山いたそうですが、現在はその職人さんも少なくなり、御所が焼失した際に貴重な資料もなくなったそうで非常に残念です。

 

◆2020年11月2日

先日お生まれになられたひ孫さんの初節句に向けて桜橘をお造りになられました。出来たてホヤホヤの作品を眺めながら、コロナ禍でまだ会うことが叶わないひ孫さんに思いを馳せていらっしゃるようです。

4寸5分の小さなサイズをご希望だったそうですが、お花は全て大きいものと全く同じ造り方で、まさに「世界に一つしかない雲上流の造花」です。小指よりも小さい桜の花びら1枚には11回ものコテが当てられています。爪楊枝の先ほどの蕾は先生のお祖父様が作られたそうで綿を絹でくるみ、小さな和紙で造られたウテナ(ガク)に入っています。このお花があまりにも素晴らしくて眺めれば眺めるほど感嘆のため息が出ます。

 

◆2020年10月19日

最後の仕上げ、花を組んでいく作業には何度も尺(ものさし)を使われます。花や葉、枝などは手造りなので一つ一つ違いますが、それぞれを組んで同じサイズに仕上げるために目分量ではなく尺で計ってきっちり仕上げることが大切です。完成した花は枝や葉がどんなに張り出していてもいつも用意した箱にきれいに収まります。職人の技がそこにも感じられます。

 

◆2020年10月5日

先日緑に染めた絹糸で檜扇の袙の松を奥様がお造りになられていました。

老い松用は少し青みがかった深い緑色、若松用は明るい緑色に染めるそうです。

絹糸も自然のものなので少し柔らかいもの、ゴワゴワ硬いものなど色々あり、造るお花によって使い分けていかれます。

◆2020年9月28日

私が巻いたススキの穂の組み合わせをしていただきました。穂先を1本1本丁寧にチェックし剪定されます。「これが雲上流の仕事です」と村岡先生から何度も聞いていますが、お金のことを考えず時間をかけて満足のいく仕事をするのが雲上流です。組み合わせがしっくりこない時は美しく巻いた糸をためらうことなくほどき、納得いくまでやり直される姿は何度も目にしています。

 

奥様は糸梅をお造りになられていました。数本の絹糸の違いでも梅の大きさが変わります。常に同じ本数にするのは大変だと思いますが指の感覚で大体の本数が分かるそうです。

◆2020年9月15日

今日は朝から松用の糸を染めていらっしゃいました。

生乾きの間に二人でパンパンとピッパリあって糸を伸ばします。

薄い色からだんだん濃く何段階かに分けて緑を濃く染めていきます。

奥様は糸梅のウテナ(ガク)を作っていらっしゃったので袙や嶋台をお造りになられるのでしょうか?

◆2020年8月31日

ススキと桔梗のお花が完成していました。

そして若松のお飾りもお造りになっていました。松は絹糸を使いますが、造る大きさによって絹糸の細さや硬さを使い分けるそうです。染めた絹糸は柘植の櫛で丁寧にときます。作業の丁寧さにいつも驚くのですが「それが雲上流の花です」とおっしゃられる先生の言葉に代々受け継がれてきた伝統の技の重みを感じます。

◆2020年8月18日

今日はススキと合わせる桔梗の花をお造りになっておられました。

花や蕾、葉など何種類ものコテを使い丁寧に成形されます。10年通っていても初めて見る形のコテがありました。桔梗の花びらをそらすためだけのコテです。

沢山のお花の種類がありますがススキや桔梗を見る機会は少なく、雌しべ雄しべの造り方も他の花とは全く違い勉強になりました。村岡先生もたまにしか造らない花は実際に生花を見て確認するそうです。

◆2020年8月3日

笹の葉が完成していました。御所の清涼殿東庭には南側に河(漢)竹(かわたけ)北側に呉竹(くれたけ)が植えられています。呉竹は葉が細く、河(漢)竹は葉が広いのが特徴です。紫宸殿の左近の桜と右近の橘と同様に御所の笹の話は何度も村岡先生から聞いています。

 

ところで先生のお祖父さまが造られた久寿玉が美しい色のままで驚いたのですが、昔の染料が良かったのと、保管状態が良かったからとのことでした。暑さで色がボケてしまいますので、温度と湿度が一定に保たれている蔵で保管されいた頃のものは比較的綺麗に保存されているそうです。

◆2020年7月20日

京都はかなり暑く湿度も高い1日でした。

今日はススキの造り方を教えていただきました。一枚の葉のつけ方も長さや位置など厳しくチェックされます。村岡先生からたくさんのことを学びましたが、技術はもちろんのこと職人の精神を教えていただきました。代々受け継がれてきたのは技だけではなく、利益を考えず技術を尽くして仕上げるという雲上流有職造花の根底にある職人気質も伝えられています。

◆2020年7月6日

重陽の熨斗飾りが完成しました。完成してからも何度もご覧になって葉っぱ一枚の向きを変えられることもしばしばあります。花や葉の位置や向きが気に入らない時は巻いた糸をほどいて納得がいくまで作り直される姿を何度も拝見し、仕事に対する厳しい姿勢に毎回感動します。

◆2020年6月22日

今日は菊慈童用の垣根の菊や、大原女の人形の手持ちの蘭菊をお造りになられていました。

どんなに小さな花びらでも手間は同じで反対にしにくいくらいです。

毎回試作を造り、一分の調整も妥協せず納得がいくまでお造りになります。

◆2020年6月8日

粽と柏餅が完成していました。

小ぶりですがとても丁寧なお仕事をされています。

1点1点手造りですので同じものがないのはもちろんのこと、今まで色々なサイズにも対応されてきました。以前、粽1本が1尺足らず(30センチ弱)、葉で包めば倍の長さになるような粽を13本束ねられたこともあるそうです。それに合わせる柏餅も本物以上の大きさだったのでしょうか?

蓬莱飾りも2尺近いものをお造りになられたことがあるそうですが、時として海を越えての注文もあったようです。いつの日かフランスで雲上流の巨大なお飾りを目にすることがあるかもしれません。

◆2020年6月1日

今日は粽を造っておられました。柏餅もセットでお造りになります。

裏打ちされた絹を貼り合わせて両面見えても良いようにします。

粽の葉をくくるのは女性仕事で奥様がされています。忙しい時は200本ぐらい巻かれたそうです。

5本、7本、9本、11本、13本の単位で粽を束にされるのですが今回は9本の束にされるそうです。

その束は半円を描くように立体的に組まれます。組み上がるまでたくさんの工程があり、完成はまだ少し先のようです。

◆2020年5月25日

2つ目の菖蒲の久寿玉をお造りになっておられましたが、花を見ながら配置を決めていかれるので

1つ目とは全く違う配置です。この花を取り付けるのにキリを使われるのですが、特注の手打ちのキリです。70年ほどこのお仕事をされて一度も誤って手を刺したことはないとのことに驚きました。

先生のお父様は一度貫通されたことがあったそうです。多くの職人さんが工具でケガをする話をよく聞きますが一度もないという話は非常に珍しく、それほど毎回慎重に作業をされているということですね。工具の使いすぎで手の皮がむけたり、タコができたりすることは何度もあったそうです。

◆2020年5月8日

菖蒲の平久寿玉をお造りになっていました。

紫、黄色、白の菖蒲で構成されています。爽やかなお色でちょうど今の時期にぴったりです。

真ん中の薬玉は仮のものです。一番最後にお香を入れるので、それまでは仮のものを付けて様子を見ながらお花を取り付けます。完成までもうすぐでしょうか?とても楽しみです。

◆2020年3月25日

杖付きの桜がちょうど桜の開花の時期に完成しました。四方から見て美しい桜の木になっているのがこのタイプの特徴だそうです。後ろ側にも花や葉がついていて本物の木のようです。

愛おしい我が子をご覧になるような眼差しの村岡先生。お家の中でお花見ができてお好きなお酒がさぞ美味しく感じられることでしょう。

今回は桜の木だけの注文でしたが本来は橘とセットになります。この場合、橘の高さは桜より1寸ほど低く造るのが良いのだそうです。

◆2020年3月9日

今日は杖付きの桜をお造りでした。

杖付き桜というのは大きく育った桜の枝が、日の当たる方に張り出して伸びたために木の棒で支えている姿の桜です。これは特に木の組み方が難しく何日もかけて組んでいかれます。花をつけていく段階でも枝ぶりを見てのこぎりで切り落としていかれます。

少し桜がついただけでもとても華やかで木に命が吹き込まれたようです。この桜が満開になる頃には外の桜も満開の季節を迎えるでしょうか。

◆2020年2月26日

今日は官女の手持ちのお花、山吹をお造りになっていました。

かなり小さいのですが花、中開き、蕾2種、葉でまとめていきます。例えば葉だけでも2種類のコテを使用、1枚ずつそれぞれに7回のコテあてをされます。2センチ弱の葉にも丁寧に命を吹き込んでおられるように感じます。

そしてこれらを絹糸で巻いていくと生き生きとした美しいお花が出来上がります。

◆2020年2月19日

今日は杖突きの桜をお造りでした。

前回にも書きましたが、雲上流の桜橘はお雛様に合わせて造ります。翁(1級)は100万円以上の雛飾り用だそうでお値段も鶴(2級)の倍くらいするそうです。花のコテの当て方も絹糸の巻き方も、蕾の作り方も、木の組み方も全てが違います。花も倍以上多く付きます。でもどちらも八重の桜と一重の桜が付き、江戸時代から既にこのスタイルになっていたそうです。八重桜(牡丹桜)だけてでは重たく、一重だけでは薄っぺらい感じがするので造花ならではの美しさの表現といつも村岡先生はおっしゃっています。

 

◆2020年2月10日

新作である定家の久寿玉、10月の菊が完成していました。とても華やかな久寿玉です。

今日は御殿花(桜、橘)をお造りになっていました。雛人形の大きさやランクに合わせて花をお造りになるのですが、大きさはもちろんの事、ランクに寄って花の造り方や垣なども変わってきます。

ランクの上中下を1級、2級、3級と表示していた事もありますが、村岡先生は翁、鶴、亀と書いていらっしゃいます。先生の上品な優しさが伝わってきます。

 

◆2020年1月27日

今日は花車のお花をお造りになっていました。

シダレ桜の傘の下にもみじ、紅白梅、山吹、牡丹、紅白サツキ、椿、菖蒲、菊のお花がついています。

小さめの花車でしたので、それに合わせてお花や葉を全て小ぶりに造るのも雲上流ならではです。

小さくても作り方は同じですので、大きいものより造りにくいと村岡先生はおっしゃられます。

◆2020年1月20日

1月15日にお誕生お迎えられ91歳になられた村岡先生は今日も美しいお花をお造りになっていました。ちょうど上巳飾りをお造りだったので、雛道具についてのお話を伺いました。

京都の雛道具は関東と違って地味な蒔絵ですが仕事としてはかなり丁寧で、1年に1セットしかできないくらいのクオリティだったそうです。よほど急かさないと納品まで10年かかったとか…きっとそのように言われるくらい立派なものだったのだと思います。というのも京都は全て分業だったので、木工、塗り、蒔絵、金具、金メッキなど多くの職人さんの手によって一つのものが完成しました。その素晴らしい道具に合うように造花も手間を惜しまず見事な花に仕上げられたのです。

 

◆2020年1月6日

新年のご挨拶を済ませて、今日は先生のお祖父さまが書かれた花の造り方などが記載された覚書帳を見せていただきました。明治一桁代にお生まれのお祖父さまは非常に几帳面な方だったらしく、筆で細かく説明や絵が描かれていました。その当時は色々なお仕事をされていたようで、伊勢神宮などの神社仏閣のお仕事も数多くされておられました。花の種類もかなり多く、サイズ違いなども詳しく記載されていました。雲上流に伝わるお宝です。

◆2019年12月23日

今日は熨斗飾り用の桜のお花の小巻きをされていらっしゃいました。

雲上流の特徴でもある一重と八重の桜の組み合わせや、中開きや蕾の組み合わせなど色々な小巻きを造り、またその小巻きを大きな1本にまとめていかれます。

絹糸でクルクルと締めながら巻いていかれるのですが、これには力が必要です。先生の強い手の力は剣道はもちろんのこと、国鉄の機関士助手だった頃に重い石炭をくべて鍛えられたかもしれないとおっしゃっておられました。石炭の種類や坂での石炭の使い方など面白い話を聞かせていただきました。

 

◆2019年12月2日

今日は平菊のお花を村岡先生と奥様と私と3人で造りました。

昔から分業で作業が行われ、花びらの裁断やコテあてなどは男仕事、軸を作ったり貼り合わせは女仕事だったようです。

平菊は20枚にカットされた一枚一枚の花びらに裏からコテをあて、そのコテがあてられた大小サイズ違いの2枚を貼り合わせて、さらに真ん中に大きな丸いコテをあてます。そして軸が付き、匂いが付くのですが、それから4〜5枚の葉を付けながら軸に絹糸を巻いていきます。

「職人は手間を考えたらあかん」私が一番耳にしている先生の言葉かもしれません。

◆2019年11月25日

60年以上お使いになられた座卓の作業机からテーブルと椅子に換えてお仕事をされていました。

新しい環境で今日もいつも通りお花をお造りになられていました。

村岡先生は16年前に勲六等単光旭日章の勲章を授与されています。伝統技術を受け継ぎつつ、小学生にも長年その技を指導をされてきました。小学校には今でも生徒さんと一緒に造った銀杏の造花が飾られているそうです。

◆2019年11月11日

対の四季のお花をお造りになっておられました。

尺定規を当てながらどんな種類のお花でも同じ大きさに仕上げていかれます。

対のお花は左右同じに仕上げなければいけないので、一つ一つ手作業のお花を揃えるのは難しいことだと思います。

◆2019年10月28日

菖蒲を引き続きお造りになっておられました。葉や蕾も出来上がっていましたので完成は間近のようです。

今日は60年前、ご結婚された当時の話を伺いました。先生のご両親様や弟さん、嫁いだばかりの奥様と家族総出でお仕事に励み、晩御飯の後も深夜12時まで働き、1月2月は雛祭り用のお花造りの追い込みで夜中の3時まで夜なべをされたそうです。

7月15日から9月まで真夏の間はコテ当て用の火鉢の火入れはせず、夜中の作業もお休み。短い夏休みの釣りがとても楽しみだったそうです。

ところで…つい先日は扇の袙花をお造りになったそうです。即位礼正殿の儀で用いられたのでしょうか?

 

◆2019年10月19日

四季の花の一つ、菖蒲の花をお造りになっていました。

菖蒲の花は3枚の花びらを合わせますが、絹糸を回しながら1枚ずつ花びらを巻き込んでいきます。

「3枚は案外難しいのです」とおっしゃる通り、私がするとなかなか1回で綺麗な三角形になりませんが、村岡先生は花びらを入れるタイミングが良いので、あっという間に内に3枚、外に3枚花びらが付いて美しい菖蒲の花が出来上がります。

◆2019年9月17日

人日のお飾りのかけ蓬莱をお造りになっていました。若松は指の力を使う大変な作業です。

 

村岡先生は長年、手を使う作業をされていますが、腱鞘炎など手を痛めることなく今日までこられました。若い頃から剣道をされ、学生の指導もされていたそうで、腕や手を鍛えてこられたからでしょうか?

 

 

◆2019年9月4日

定家の久寿玉に3/4花が付きました。

フレームに小巻き(花や蕾、葉を組み合わせたもの)をキリで穴をあけて挿していかれます。

色の配置、花の向きなど丁寧に検討されます。少しでも納得いかない場合は小巻きの絹糸を切って何度も組み合わせし直し、巻き直しをされます。

村岡先生の職人魂はいつまでもお若く生き生きされています。

◆2019年8月29日

定家の久寿玉の一つ十月の菊がもうすぐ完成しそうです。

最後の大詰め、レイアウトをされています。

90歳になられて(後3ヶ月で91歳!)新作に挑戦されていらっしゃるお姿を側で拝見し、ただただ尊敬いたします。

ほんの少しの花の向きや葉っぱの付き具合まで細かくチェックして手を入れていかれます。

◆2019年8月5日

今日は京都女子大学の学生さんから取材を受けておられました。

雲上流の造花についてや造り方を熱心に話されていました。

今日の取材は京都の伝統工芸の本にまとめられ、来年刊行される予定です。また決まればお知らせいたします。

◆2019年7月30日

久寿玉用の平菊をお造りになっていました。24枚から32枚の切り込みを入れた花びらに一枚ずつ丁寧にコテをあてていかれます。それをまた重ねてニオイ(雌しべ、雄しべ)のための大きな丸いコテをあて、花粉のついたニオイをつけます。

先生のお父様の頃は糸引きの菊でした。糸を並べて和紙を裏打ちするためにコテのあたる方向が決まっています。そのため2枚ずつ花弁を切ってコテをあて貼り合わせていきます。大きな平菊でしたら大きさの違う花弁を2重3重にするので48枚もの花弁を貼り合せることになります。何年経ってもそのコテはしっかりあたっているため、形が美しく残っているそうです。

 

◆2019年7月22日

今日は平菊をお造りになっていました。

菊には平菊と蘭菊があります。花びらの大きさにもよりますが24枚の花びらを切り、その一枚一枚にリズムよくコテをあてていかれます。そしてその花びらを2枚や4枚を重ねて一輪の菊ができます。

気が遠くなりそうなコテあて作業ですが、「職人は手間を惜しんだらあかん」と先生のお父様の言葉を今も実践されています。

◆2019年7月8日

今日は七夕のお飾り、梶の葉を造っていらっしゃいました。

大きめのコテで葉の柔らかさを表現されます。

 

葉や花びらは和紙で裏打ちした布を重ねて包丁で裁っていかれるのですが、多くて何枚ぐらい重ねるのか尋ねたところ、橘の葉は60枚重ねたそうです。包丁も30分ごとに研いでいたとのこと。60枚も重ねると大きさも変わるのですが、そこが均一の葉にならないために大切なところだそうです。

 

◆2019年7月1日

今日は婚礼用の島台のお仕事が終わり、次の制作に取り掛かっていらっしゃいました。

雲上流に代々伝わる絵をもとに新しいことにチャレンジされるようでとても楽しみです。

仕事の注文はなかなか途切れないのですが、時間があれば造ってみたいと思っていらっしゃしゃるものがいくつかあります。

以前はリタイヤしたらこんな花を造りたいとおっしゃってましたが、村岡先生にはリタイヤという言葉はなさそうです。生涯現役で今日も尺定規を持って布を裁断されていました。

 

◆2019年6月24日

今日は絹布に和紙の裏打ちをされました。絹の布も村岡先生がご自分で染められます。

糊の練り具合や均等な薄さで糊を引く作業は力と技術が必要です。

昔は端午の節句ものが終わった6月の梅雨の時期に、一年分の材料を用意するためにこの作業を1ヶ月間毎日されていたそうです。

少しさせていただいただけでも汗が吹き出て体力を消耗し、当時は布の大きさも倍だったので奥様と二人でどんなに大変だったことかと想像に難くないです。

 

◆2019年6月10日

重陽の茱萸袋(ぐみ袋)の菊の花びらにコテを当てていらっしゃいました。一枚の菊の花びらは32枚。

一つ一つ丁寧にリズム良くコテを動かして、3〜4枚ごとにコテを替えていかれます。熱が弱いと(コテが効いていない状態)ダメだと常々おっしゃっています。

1本の菊を作るのに4枚必要なので128回もコテを当てていらっしゃるのです。

この丁寧な作業をそばで拝見する度に感動します。

 

◆2019年5月27日

紙を重ねて裁断される時は特別な包丁をお使いになります。

この包丁も刃を研いで半分ぐらいの長さになったそうです。

何本も包丁をお持ちですが、相性の良いものは限られていて刃がどんどん短くなります。

村岡先生のお父様もお気に入りの鋏は要(かなめ)が緩んでいて他の人ではうまく切れなかったそうですがお父様は上手に切られていたそうです。やはり道具は手馴染みの良いものが一番使いやすいのですね。

 

◆2019年5月13日

菖蒲の花やヨモギの葉を造られていました。端午の節句の熨斗飾りにされるそうです。

1週間も手を動かさないと造れなくなるのでは?という気がして、毎日なにかしら手と動かしていますとおっしゃっていました。

村岡先生の手は今も艶やかで4〜50代くらいの方の手のようです!と思わず言ってしまいました。

 

 

 

◆2019年4月23日

6番のお雛様に合う桜橘を造っていらっしゃいます。

大きなサイズですので木組みもとても力がいる作業になります。

そして写真は橘の葉をカットされている様子ですが、裏打ちした絹を何枚も重ねて顎で押さえながら

包丁で裁ちます。1日に何百枚も裁たれた頃は顎が真っ赤になったそうです。

 

 

 

◆2019年4月1日

和紙で裏打ちした絹は重ねて特別な包丁で裁断されます。

多いときは20枚重ねるそうですが、定規で押さえたぐらいではズレてしまうので重い桜の角材を押さえとして使っておられます。話は逸れますが、この桜の角材は旧国鉄京都駅の貴賓室を解体した時に出だものだそうです。

足も乗せて全身を使っての裁断はとても力のいる作業です。

 

 

◆2019年3月18日

今日は真の薬玉に6色の紐を付けておられました。

表から見て結び目が美しく見えるように裏から一本一本8箇所ずつ結んでいかれます。

紐のよりが交互に右巻き、左巻きになっているのも雲上流の特徴です。

奇数の数字を使うことが多いのですがこの左右合わせて12本は1年を表しているそうです。

 

 

 

◆2019年3月6日

昨年末からお作りになっていた四季の平薬玉が完成し、撮影させていただきました。

赤色の牡丹の薬玉とピンク色の牡丹の薬玉の二つは「人それぞれお好みがあると思います」とのこと。

どちらもとても華やかで美しい四季の薬玉です。

精魂込めてお造りになって少しお疲れになられたご様子でしたが「休んだら腕が落ちる」と今日もコテを当てていらっしゃいました。

 

 

◆2019年2月18日

今日は真の薬玉の柏の葉をお造りになっていました。

力強くコテ当てをされる手はとても若々しくて艶やかです。

「大きい薬玉にする時、小さい花を沢山使っても美しくは見えない。離れて美しく見えるようにしないとあかん。ウチの親父はどれぐらいのとこに飾られるのですか?と聞いてそれに合わせて造っていた」

一寸違えば、花も大きくして数も倍ほどいるそうです。一つ一つ人形の大きさや飾るスペースに合わせて造るのが雲上流の花です。

 

◆2019年2月9日

今日は真の薬玉用のサツキをお造りになっていました。

しっかりコテがあたりとても美しいです。

「これは天皇家と同じサイズやけど、一回り小さいものや…お客さんの注文によって

色んな大きさを造る。たたみ一畳の大きなサイズも造ったことがあった」とのこと。

注文に合わせて仕上がりのサイズから計算して造られたお手製の花びらの型が沢山あります。

それにしても…たたみ一畳の真の薬玉は顔より大きいお花!今はないそうですが拝見したかったです。

 

◆2019年1月30日

四季の薬玉に色とりどりのお花が次々に取り付けられていきます。

一つのお花を付けるのに何度も尺定規を当てながらサイズを揃えていかれます。

「ちょっとでもさぼったら腕が落ちる」と今日も丁寧なお仕事をされていました。

 

 

 

 

◆2019年1月21日

先週、満90歳になられた村岡先生は今日も丁寧にお花をお造りになっていました。

四季の薬玉は色々なお花が付くのでとても華やかです。

その内の一つ平菊を手に取り、裏側を見るとギザギザのガクがちゃんと付いていました。

「雲上流の花は見えない部分も丁寧に造るのです」とおっしゃっていました。

どんなに丁寧に造られているか…毎回驚いている私です。

 

 

◆2019年1月14日

明日は村岡先生の満90歳のお誕生日です。

「少しずつ衰えるけれど、ずっと作り続けて少しでも維持をしたい」とおっしゃられていました。

村岡先生がこの一年もお元気にお過ごしになられる様に心から願っております。

 

 

 

 

◆2018年12月18日

葉っぱの葉脈のコテは初め強く、だんだん力を抜いて強弱を付けます。
プレスでは決して出ないコテならではの表情になります。
写真は四季の薬玉の藤の花です。

◆2018年12月17日

1つのものを造るのに京都はそれぞれの専門の職人がいるからエエもんができる。
他所は1つを1人でするから楽やし、廃れにくいけど…
と、村岡先生は少し寂しそう話されていました。
実際、京都ではどんどん職人さんの数が減り、そのモノが見られなくなってきています。
写真は先生がお造りになった四季の薬玉用の紅葉です。
1つ1つ丁寧に色付けされていますので本物のようです。

◆2018年11月26日 

不器用な人の方が職人に向いている。

不器用な人は1つのことを一生懸命するけど、器用な人は要領も覚えて手を抜きがちだそうです。
村岡先生は「私は不器用なんです」とおっしゃってました。

◆2018年11月17日

「お天道様(おてんとうさま)が西から出ん限り、職人は飯が食える」
この言葉もお父様から良くお聞きになられたそうです。
職人は商売の事を考えず、仕事に専念しなさいということらしいです。

 

◆2018年11月12日

 先生のお父様の言葉「職人は手間を考えない。金を考えたらあかん」

 子供の頃からずっと聞かされてきたそうです。